就農検討会

ほんとうはまったり穏やかに生きたい

『都市近郊で小さな農業をしたい人、兼業から就農を検討している人』にオススメの1冊

以前に同じように1,000万円を稼ぐという副題で書かれた農業の本を読んだことがありました。本書の場合は兼業というテーマが気になって手に取りました。

 

『小さい農業でしっかり稼ぐ! 兼業農家の教科書』

著者:田中 康晃

発行所:同文館出版㈱

2023年6月30日 発行

www.amazon.co.jp

【著者からのメッセージ】
本書は、私が2012年から約10年かけて「農業で稼ぐ」という本質を追求し続けた、
実証実験結果報告書です。
最初のボロボロの状態から、「ある気づき」を経て上昇し、ここ数年でようやく軌道に乗り、
農業のみで年商1000万円前後を維持できるようになりました。
ある程度、「こうすれば儲かる」というのも見えてきたところです。
本書では、まったくのゼロの状態から農業を始めて、
農業年商1000万円まで到達した10年間の過程をつぶさにお伝えしていきます。

私は農家出身でもなく、畑違いの業種から脱サラして、「ゼロから新規就農」で、
農業スクール運営、行政書士との兼業農家です。
こと「兼業」「非農家出身」「脱サラ」で農業を始めようと考えている方にとっては、
私の失敗談も含め、きっとお役に立てるものと思います。

 

【感想】

農業専門の行政書士からの就農、年商1,000万円(純粋に農産物の売り上げがほとんど)になったストーリーが書かれている。

初期の1~3年目までは売上・栽培技術も安定していない様子でそれゆえに兼業を勧めている面もあると感じられる。

農業一本で1年目から十分な収入を確保したいなら、栽培技術が確立していること、販売先が明確な作物を選定できていること、は必須の条件となりそう。もちろん綿密な計画も。

 

逆に趣味や兼業・副業の状態からでよいなら、著者のような始め方もありだと思えた。

ただし、著者が軸にしているイチゴ・イチジクについては、兼業で行う場合、私のように現状が会社勤めでフルタイムで働くサラリーマンには少々厳しいように感じられる(士業は相性〇と思われる)

 

栽培作物の選定についても3章で言及があり、マーケットの視点からの選定をおすすめしており、売上規模1,000万円のレベルを目指すのならば、

・市場規模が小さくても競争が少ないもの

・量ではなく、質で勝負できるもの

を進めている点はとても参考になると思います。

 

小さな農業といわれると多品種少量栽培をイメージしていたが、本書は兼業を視野に入れていることもあって、違う流派に属する農業の形での成功例と思われる。

具体的には、果樹や嗜好品寄りの農産物の体験農園型のタイプ。

どちらの場合も大きな生産法人や大産地と対抗するのではなく、その逆張りや隙間を狙って生き残っていくタイプに見える。

また、体験農園型の場合は、都市に近い・観光地が近いなどの条件も必要となってくる。

 

自らの就農地が、どのような市場環境にあるのかも作るべき作物の選定に大きく関与する項目なのだなあと感じました。

また、県の就農支援組織は兼業を推進しているところは少ないように見えるので、本書で示されている内容はそういう場所ではなかなか聞けない貴重な話になっているのかも。