日本人に最も馴染み深い農産物はお米で間違いない。そんなお米の中には数多くの品種が存在し、ブランド米と呼ばれるような高価格帯の品種が存在する。
そんなブランド米はどのようにして確立されたのか?の一例を知ることのできる一冊です。
『奇跡の米「龍の瞳」安全で美味しい米を未来へ』
著者:今井 隆
発行者:ゆいぽおと
2023年3月13日発行
2株のイネとの偶然の出会いから紆余曲折のネーミング、試行錯誤の栽培、コンクールへの挑戦などブランド化までのいきさつに加えて、未来に向けての新しい農法の確立や地域の活性化の現状を6年の歳月をかけてまとめたルポ。
【感想】
全体を通して印象的だったのは、著者の地域(岐阜県下呂市近辺)への思いが強いこと。いかに地域を活性化させるのか、農業を通じて地域を保全していくのかということがテーマに置かれていると感じられる本でした。
新品種発見に至った経緯やその後の品種登録、育成者権の扱い、ブランド化の過程、組織運営での試行錯誤、失敗まで赤裸々に描かれていて農業に取り組む際のリアルな声を感じられる。
また、最終章では農業関連の用語についても説明・言及があり、理解を深めるのに役に立つのではないかと思います。今後も読み返すのではないかと思います。
中山間地で農業、特に米をメインに取り組む場合には、この本のようにブランド化が必須の条件に思えてくる。JAや県が作り上げなくてもブランド化は可能であることを示してくれているとも思えるが、やっぱり米は商売として成立するのが難しいのかなぁ。